<四歳児の発達課題> 「私がしてあげる」(おせっかいと仲間意識)
三歳は自我・個性が芽生える時期と言われますが、自己主張をし攻撃性を発揮する中で「自分」を掴んでいった子どもは、四歳になり、今度はその自分を使って何かがしてみたくてたまらない時期になります。つまり、「自分はこんなものが好きでこんなものが嫌いで、こんなことはしたくて、こんなことは許せなくて、こんなことは頑張る人間だ」ということが分かったら、「こんな自分を使って何をしよう、何の役に立つんだろう」となるわけです。これがいわば「おせっかい」という四歳児の特徴を生み出します。「これしてあげる!」「手伝ってあげる!」「私がする!」と、先を争って何か手伝ったり、小さい子の面倒を見たりします。また、大人から見れば、しなくていいようなこともたくさんしたがるのです。しかし、これは、今まで人にしてもらうことから、自分のことを自分でしたがる段階を経て、自分を掴み、そうしてはじめて、「自分から周囲に向かって手を差しのべようとする」「自分から一歩を踏み出そうとする」人間になろうとし始めるということです。ですからこの四歳児のおせっかいは、人間関係において自分から他にエネルギーを注ぎ込むというあり方のはじまりであり、その子が将来、「人とつながろうとする人間」「人に手を差しのべようとする人間」 「見て見ぬふりをしない人間」になることの第一歩なのです。
しかし、現代生活では、この「おせっかい」の心を満たす環境が整っていません。昔は、電化製品がじゅう実していませんから、家事の手伝いがたくさんありました。ところが、お母さんの家事が楽になった反面、手伝えることがなくなってしまいました。四歳の子には電化製品の操作は難しく、かえって危険なものでもあります。 ですから子どもが何か手伝おうとしても、お母さんからは「邪魔しないであっちへ行って、それが一番の手伝いよ」ということばが返ってくることも多いのです。このことは、その子にとっては「人が忙しそうなときには手を出すのではなく、遠くで自分のことをするのが一番なんだ」 「人が大変なときは、見て見ぬふりをして手を出さないのが一番なんだ」ということを学ぶことになってしまいます。しかも幼児期の体験は、その子の血となり肉となり、性格となってしまうということですから、これはそのままその子の人生観になってしまいます。この特徴は今の子どもたちに強く見られます。
いじめを通して
「いじめ」は昔からあったと言われますが、今の「いじめ」と昔の「いじめ」とで決定的に違うところがあります。それは「昔のいじめ」には、「いじめっ子」と「いじめられっ子」の間に、「おせっかい焼きの子」がたくさん存在していたということです。「いじめ」の現場には、「やめなさいよ」 「かわいそうだ」 「先生に言いつけるぞ」という「おせつかい焼きの子」の声が飛び交っていたものです。この存在が、「いじめ」のブレーキになっていましたから、今のように世間を騒がすほどいじめる子といじめられる子だけが先鋭化してエスカレートしたりしなかったのです。
ところが、現代のいじめの現場には、この「おせっかい焼きの子」が存在せず、「いじめっ子」と「いじめられっ子」しか存在していません。 「おせっかい焼きの子」の代わりに、「見て見ぬふりをする子」が多数存在しているのです。 「いじめっ子」と「いじめられっ子」は、マスコミが騒ぎますから目立ちます。「昔のいじめとは質が違う」などと一言で片づけるのではなく、「見て見ぬふりをする子ども」が増えていることに、もっと注目する必要があるのではないでしょうか。 これが今の「いじめ」の一番の問題だと思っています。私はこの原因の一つに、四歳の頃の「おせっかい」が、じゅうに満たされなくなったということがあるように思うのです。 四歳は、「自分から手を差しのべ」「自分から足を踏み出し」「自分を何かの役に立てたい」という人間としての第一歩を踏み出すときなのですが、それを体験として得られないため、「自分から手を差しのべることはよそう」「自分から足を踏み出すことはやめよう」「自分を何かの役に立てるより、自分のことだけを考えよう」という子どもが育っているのです。見て見ぬふりをする子をなくすことこそ、いじめの解決に必要不可欠なことですし、保育の中で実践可能なことです。四歳では、保育の中でおせっかいをたくさんさせて、自分が何かの役に立つことに誇りを感じるようにして下さい。
自分から「何かしよう」と一歩前に出る→誉めてもらえる→うれしい
この体験をたくさんするのが大事なことです。どれだけ「おせっかい」をさせ、それを役立たせるかを考えなければいけません。そして「おせっかい」をじゅう分に体験した子どもは、自分以外の命を育てることに進んでいきます。目の前にいる人の役に立つだけではなく、将来を見通して動物を飼育したり、植物を育てたりします。 これが五歳の発達段階につながります。ですから、四歳のときの「おせっかい」をうるさく思わないで下さい。四歳は、自分から人に対して何か始めるときですし、人生で初めて人の役に立ちたいと思う心が芽生えるときです。また、積極的に対人関係を持とうとする社会性が芽生えていることでもありますから、単なるおせっかいだと思わず、成長する上で必要不可欠な「おせっかい」として、また、支え合って生きる人間になるために大変大事なことなのですから、素敵なものとして認め、正面から受け止めて下さい。四歳のときの「おせっかい」を全て潰しておいて、大きくなってから「見て見ぬふりをするのはいけな
「い」と教えたところで、全く効果はないのですから......。
『機微を見つめる~心の保育入門~』
山田真理子 著 より