申孝保育園

過去の保育日誌

7月 園だより

令和8年7月1日 NO.714
前田遥奈

今月の絵本「おふろだいすき」
作者・松岡享子 絵・林明子

この絵本を動物が好きな人たちへ…。
まこちゃんがお風呂に入ると、クジラやペンギン、カバなど、大好きな動物たちが次々と現れます。大人から見ると「そんなことあるわけない」と微笑ましく思う世界ですが、子どもにとっては本当に起こりうること。特に動物が大好きな人にとっては、「もし大好きな動物たちと同じ空間で過ごせたら」という夢が叶ったような、胸が温かくなるお話です。動物園や水族館に行くと、大きな動物や海の生き物たちに会えます。でも、どうしてもガラス越しや柵越しに「見る」「観察する」関係になりがちです。一方、この絵本のまこちゃんは、動物たちと一緒にお風呂に入り、カバの体を洗ったり、クジラのそばでゆったりしたりと、同じ空間で一緒に過ごします。眺めるのではなく、触れ合える。その自然な距離感が、動物好きの心をそっと掴むのです。お風呂という舞台も、とても素敵だと思いました。お風呂は、一日の疲れをほっと溶かしてくれる場所。だからこそ、想像の扉が開きやすいのかもしれません。我が家の次男は食べ物が大好きで、お風呂で桶にお湯を入れ、シャンプーやボディーソープを調味料に見立てて「ラーメン作り」に夢中になることがあります。まこちゃんは、動物が大好きだからこそ、お風呂の中にたくさんの動物たちが訪れたのかもしれません。大好きな動物たちと、温かいお湯の中で一緒に過ごしたい——そんな願いが、この物語の根底にあるように感じます。
 そして何より印象的だったのは、まこちゃんが動物たち一人ひとりの個性を、なんの抵抗もなく自然に受け入れていることです。クジラの大きさも、ペンギンの兄弟の関係も、「嫌だ」「変だ」と否定することはありません。「そういう存在なんだね」と、ありのままを受け止めているように思います。
 また、読み進めるうちに、この絵本に登場する動物たちは、もしかすると、まこちゃんの周りにいるクラスメイトを表しているようにも思えてきました。おっとりした子、元気いっぱいの子、慎重な子、甘えん坊な子。一人ひとり性格も得意なことも違います。しかし、その違いがあるからこそ、毎日の生活は豊かで面白くなります。動物たちがそれぞれ違う魅力を持っているように、子どもたちにも一人ひとり、その子にしかない魅力があります。この絵本は、そんなクラスメイトとどのように関わっていくのかを考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。それは子どもたち同士だけでなく、私たち大人が子どもと、そして人とどのように関わっていくのかを見つめ直すきっかけにもなるように感じます。
私自身、ときには「もっとこうしたらいいのに」と口を出したくなることがあります。でも、この絵本を読んでいると、「その子らしさを、まずは受け止めてみよう」と優しく背中を押してもらえたような気持ちになりました。
これからの保育でも、一人ひとりの個性や「好き」という気持ちを大切にし、その子らしさを受け止めながら、子どもたち一人一人と丁寧に向き合っていきたいと思います。

令和8年7月  教育的断片 須藤孝也

今年も学生の教育実習を見に行く機会がありました。現場を見に行くと様々な気づきが得られます。今回はそのうちの一つ、私たちと世界とを繋ぐのは知ること 知 である、ということについてお話しようと思います。
 知 がなければ、私たちは世界のなかで自閉し、孤立し、真っ暗闇のなかに閉じ込められてしまいます。自然のことも、動物のことも、社会のことも、誰か他者のこともわからないと、自分のうちに閉じこもるよりほかないのです。子どもたちがそうならないように、世界へと開いてあげるのが、世界へと繋いであげるのが教育だと言っても過言ではありません。
 犬はこうやってご飯を食べるのかでも、パイナップルはこういう味がするのかでも、さっちゃんはお人形さんが好きだでも、何でもいいのです。それはすべて世界についての 知 です。その 知 を通して、子どもたちは犬に、パイナップルに、さっちゃんに繋がるのです。閉じられていた世界への扉が開かれるのです。
 大人は子どもに何か教えるときには、そのことを明確に意識していないといけません。そうしないと、つい大人は、子どもがよくわからない知識を与えるだけになるからです。よくわからない知識は、子どもと世界を繋ぎ損ねた知です。そうした知識を与えられても、子どもは知る喜び、学ぶ喜び、世界と繋がる喜びを感じることができません。最悪の場合、知 を嫌悪するようになってしまいます。大人の方はよかれと思ってやっているのでしょうが、これはとても残念なことです。
 子どもに何かを教えるときは、子どもは子どもの世界に住んでいることを思い出してください。大人の世界で通用する知識も、時に、子どもの世界では通用しません。通用しない知識を与えられることは、子どもを知識嫌いにしてしまいます。
 ちゃんと子どもの世界で通用する知識を、子どもと世界とをきっちり繋ぐ 知 を、子どもに知ることの喜びを感じさせるような知を、子どもたちには与えてあげてください。

須藤 孝也

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