2月園だより 教育的断片より ~生かせいのち~


2011年01月31日 ( 月 )


(教育的断片)2月号より
皆様もご存知のように、あいの保育園の保育理念は「生かせいのち」です。
もちろん、食べ物さえ与えていれば、あるいは寝る場所さえ与えていれば、子供を生存させておくことはできるでしょう。しかし言うまでもなく、人間に与える食べ物は、動物に与えるエサと同じものではありません。食べ物さえ与えていれば、あるいは寒さをしのぐ服さえ与えていれば、人間を「生かす」ことができるというわけではありません(動物との間にだって、もう少し親密な関係が可能かもしれません)。「生かせいのち」が言わんとしていることはもっと別のことだと思われます。今回はこの保育理念について、これを私なりの言葉で私なりに言い換えてみようと思います。
 「生かせいのち」の根本にあるのは、生きる力、ないし育つ力を、子供自身が持っているという事実の認識だと思います。もちろん子供の生きる力は、最初はごく弱いものでありましょう。生まれたばかりの赤ちゃんは、ちょっとしたことですぐに命を落としてしまうかもしれません。しかしそれにもかかわらず、やはり子供は育つ力を持っている。この力を子供自身が持っている。この力は、大人が与えるものではない。この力が弱かろうが強かろうが、それとは関係なく、子供自身が育つ力を持っている。この事実の認識が出発点であるように思います。
 第二に、子供が自ら育つ力を持っていることを、大人は信頼しなければならない、ということも同時に言われているように思います。育ちには時間がかかります。こちらが思うようには、思うようなスピードでは育ってくれないこともあるかもしれません。しかしそれでもなお、あるいはそういうときにこそ、私たち、子供を育てる者は、育つ力を子供自らが持っているということを信頼しなければなりません。
 子供は、育つ力を自ら持っている。これは子供の力です。大人はその力が発揮されるのを妨害してはいけません。これが第一条件です。大人が妨害していたら、子供の育つ力は十全には発揮されないまま終わってしまうでしょう。それを前提とした上で、大人は、子供の育つ力が十全に発揮されるように、働きかけなければなりません。子供の育つ力を、それに見合った仕方で、刺激しなければなりません。
 以上、子供には自身で育つ力が備わっている、と言ったのに、今度は、大人は子供の育つ力を刺激しなければならない、と言って、話が矛盾しているのではないか、と思われるかもしれません。しかしそうではありません。
 いくら優秀な親でも、大人の力だけで子供を成長させることはできません。子供が育つためには、子供の育つ力が必要です。これは子供自身のものです。まずもって子供に自ら育つ力があってはじめて、大人はこれを刺激することができるのです。しかしもちろん、子供が育つのは、子供の力だけによるのではありません。子供は十全に育つのに、大人からの刺激をも必要とします(意図せずとも、一緒に遊ぶ子供だって子供の育ちを刺激するでしょう)。大人の力と子供の力、これら二つはどちらも必要で、両方がそろってはじめて、子供は自ら生きる力を十全に発揮し、大人は子供を「生かす」ことができるのです。
 教育は相互行為である。大人と子供、これら二つの力の絡まり合いが、教育という行為である。こうしたことを理解した上で、大人は自分たちに割り当てられた仕事をきちんと果たそうではないか、子供を生かすという役割をしっかり果たしていこうではないか。「生かせいのち」というフレーズに、私はそういう意気込みを読みとります。

須藤孝也

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